WANDERLUST

私(シェフ デン)が⽣まれた時には、⽗と⺟が経営するマイピアがすでにあり、幼少の頃はパン屋の⼯場が私の格好の遊び場でした。中学生までは、パン屋を継ぐことは特に意識していませんでした。

⾃分の中で、パンの道に進もうと決⼼したのは、本格的に進路を決めなくてはならない⾼校三年生の時でした。製パンの専⾨学校と⼤学と、どちらに進もうか迷いましたが、最終的には東京農業⼤学の醸造科学科に進学、学校では主に、発酵学と応⽤微⽣物学を学びました。(遊びも⼀⽣懸命でしたが・・・)

卒業後は、埼⽟のパン屋に修⾏に⼊り、とても濃密な6年間を送りました。その間にフランスやドイツに研修にも⾏きました。この修⾏時代に得た縁が続いており、今でもフランスやドイツの職⼈さんと技術交流を続けています。

そして2008年、マイピアに帰ってきました。修⾏先のお店が繁盛店だったこともあり、⽣意気にも意気揚々としていたと思います。
ところが入店当時、⾃分の作るパンが中々売れず、両親や親⽗の職⼈さんとも上⼿くいかず、たいへん落ち込みました。その後、2012年ドイツで⾏われたパンのワールドカップ(ibacup)に⽇本代表として選ばれ、このころから⾃分の作るバゲットやライ⻨パンを買っていただけるようになり、そして今ではたくさんのお客さまに⼝コミで評判にしていただき、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。

私は、本物の美味しさを味わっていただきたいと常⽇頃から思っています。バゲットならフランスに⾏かずとも、ライ⻨パンならドイツに⾏かずとも、群⾺の太⽥に居ながらにして、本場同様のパンをお客さまに味わっていただきたい。ぜひドイツに、フランスに、思いを馳せながら味わっていただければ、嬉しい限りです。

スタッフには、⽇頃から妥協はするなと話しています。妥協とは、⾃分との約束を破ることだと思っているからです。他⼈との約束を守るのは当たり前のことですが、⼀流と呼ばれる⼈たちは「⾃分との約束」を必ず守っているのです。(ついつい⾃分に⽢くしてしまう場⾯が多々あり、⽇々猛省です…)さらに、パンに限らず⾊々なものに興味を持つように、そこから何かヒントを得るようにとも。

美味しいパンを作るためには、最⾼の技術がもちろん必要ですが、使⽤する材料も本物・最⾼の物でなければいけないと思っています。お店が⼤変だった時も、決して材料の質を落とすことなくお客様との約束を守ったことが、現在のWANDERLUSTに繋がっているのだと⾃負しております。

そしてお客様から「美味しい!」と⾔ってもらえることが、私を含めたスタッフ全員の喜びです。そのためには、これからも決して努⼒を惜しみません。